永く住み続ける家をつくる

土地を探す必要に迫られて知り合いの不動産会社から売り土地の情報を送ってもらっています。その中で「これは」と思うものは現地を確認しに行きます。土地の資料に「古家付き」と書いてあるものが多いのですが、現地で確認すると何のことはなく築後30~40年の建物ばかりです。

日本の住宅の平均寿命は35年というデータがありますが「古家付き」という売り土地情報を実際に目にするたびに、このデータがおおよそ正しいということを再確認しています。

料理人は料理を見ただけでおいしいかどうかわかるそうです。見ただけで食材の仕入れや調理の工夫に気持ちが込められているかどうか、そのことがプロなら一瞬で判断できるのでしょう。

家も同じで新築された家を見ただけでその家が35年後にどうなるかということがおおよそ想像できることがあります。

家は人生で一番大きな買い物であり、それが短命に終わってはならない。作り手として家が短命に終わると残念でならないという想いから、久しく「永く住み続ける家」をテーマとして家づくりに励んできました。

永い寿命を持つ家にするには「丈夫で安心できる構造」がまず必要になり、その第一は地盤の安定性と確かな基礎工事にあります。また自然災害にも安心できる余裕を持つ強度の構造体が必要で、これらは経験値などという曖昧なものではなく、データや計算に裏付けられたものでなければなりません。

木の家なら耐久性の高い樹種を使用することも必要条件となります。30年後は時代遅れの家にならないよう永い先を見越した先進の性能や経年劣化でなく経年変化に深い味わいが感じられる仕上げも大切です。こういったことが永い寿命を持つ家の基礎的な条件の一部です。

その上で大切なことは、年月が経過しても失われない価値を持つ家にすること。言い換えれば、これは住まい手が永く愛着を持ち続けられる家にするということです。

かわいそうにも35年程度で「古家」と呼ばれてしまった家を何軒も見続けてくると共通しているのは愛着が失われてしまっているのではないかということです。「手を入れた」形跡が見あたらず使い捨てにされていったようにさえ見えてしまいます。そうは思いたくもないし言いたくもないのですが残念ながらそのように感じられます。

そうなってしまうのには複数の大きな原因があり、それらを全て取り除くだけでなく、年月の経過と共に価値が増していくようにすることを考えてアップデートを繰り返していくこと、これが「永く住み続ける家をつくる」という山手工房の家づくりのテーマ実現へと繋がっていきます。

このことを今後も追求していきたい。

 

長くなりました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。