床下湿度の話

私達はこれ迄に新築工事だけでなく数多くのリフォームを手がけてきました。リフォームで多いのは、浴室、キッチン、トイレなど水廻りの設備機器の交換です。水廻りのリフォームでは土台や柱がボロボロに腐ってしまっている場面によく出くわします。これは、水廻り設備からの漏水や床下の高い湿度が原因です。土台や柱をしっかりと長持ちさせることは長く住み続ける家の基本中の基本です。

床下の湿度上昇を防ぐ建築的工夫
土台や柱を長持ちさせるために、大切なことは床下の湿度を低く保つことです。夏の最盛期の午後2時頃、床下の湿度は70~80%にまで上昇します。腐朽菌の発生には気をつけなければならない湿度環境です。 湿気を防ぐためには、地中の湿気を防ぐベタ基礎を採用することや床下に効率よく外気を取り入れる工夫が必要です。

気候・風土の影響
日本の夏は高温多湿でシロアリが繁殖しやすい気候です。シロアリは北海道の北部を除いて、ほぼ全国的に分布しています。特に、家の床下は暗く湿度が高く腐朽菌やシロアリが好む条件がそろっています。従って、土台や柱などは腐朽菌やシロアリに強い樹種を選ぶ必要があります。

暮らしの工夫で床下湿度を下げる
山手工房のお客様の中には、床下の涼しい空気を室内に取り込み、暑い夏を乗り越えている方々がおられます。これは、床下の湿度を下げながら、室内に「涼」を取る一石二鳥の暮らし方です。方法は極めて簡単で床下点検口のフタを取り外してスノコを載せるだけです。虫が気になる方は網戸を付けている方もおられます。一年を通じて安定した地中温度は夏は気温より低く、基礎コンクリートに蓄冷されます。その蓄えられた冷熱を室内に取り込むと、夏季に長時間外出した時でも、随分と涼しいようです。昔の町家の「通り土間」がひんやりと涼しいように、土間の冷蓄熱を上手に活かしましょう。

床下の空気が涼しい訳
床下は気温に左右されにくい地熱の影響で、基礎コンクリートが冷やされ冷畜熱が起こります。この涼しい空気を室内に取り込むことで「涼」を得るというこの方法は何も新しい方法ではありません。昔の町家には「通り庭」と呼ばれる土間空間があり、この空間が夏の涼をとる一助となっていました。エアコンが普及する以前、暑い夏を乗りきるためには建築的工夫に加えて暮らし方の工夫が必須条件でした。電力使用抑制下、もう一度暮らし方の工夫をしていく必要があるのではないでしょうか。緑のカーテンや簾と合わせて、この方法を用いれば、室内気温は随分と変わります。

床下は完成すると目にすることは少なくなります。しかし、家の寿命を左右する大切な部分。家を建てるときには、土台や柱を長持ちさせる床下のことを考えておきましょう。家を建てたあとも床下湿度を下げることを考えておきましょう。木の家が、いつまでも丈夫で長持ちするためのポイントは床下の乾燥状態を保つことです。