この夏に求められるパッシブデザイン

今週、梅雨入りとなり日に日に暑くなってきました。

今年は感染症の問題があり、窓を閉めきってエアコンを利用するのは

気がひける夏になりそうです。

 

「夏対策として建築でできることを全てやり尽くすこと」

「住みながら工夫をして夏の暑さをしのぐこと」

この両面を考えなければならない夏となりそうです。

 

そのうち、今日は建築的工夫による夏対策について。

 

建築にはパッシブデザインと呼ばれるものがあります。

これは設計の工夫により夏も冬もエネルギーに頼らず

快適な室温で暮らせることを意図したデザインです。

 

夏のパッシブデザインは「断熱」「遮熱」「通風」の三要素から成ります。

そのうち、まず断熱について。

猛暑の夏が一般的となり生命の危険さえ危惧される近年は

断熱は今やウォントではなくマストの条件であり

これをしっかりとしているといないのでは

住み心地に雲泥の差が生まれることになり

パッシブデザインとは住み心地をデザインすることと言い換えることができます。

夏の太陽の厳しい熱を受けるのは屋根で、まずは屋根からの熱を断つことが必要で

それには天井断熱ではなく屋根断熱が有効です。

 

 

次に遮熱について。

遮熱の第一歩は屋根の軒の出を深くして窓から入る太陽光を遮ることから始まります。

単に深くするだけでなく地域の太陽高度を読んで計画することが求められます。

窓と軒の高さの関係も重要で、窓よりあまり上にあると効果は半減するので

その場合は付け庇などを別途取り付ける必要があります。

このあたりは階高や断面計画とも関連してくるため

総合的に判断する必要があります。

太陽が西の空に傾いてからの遮熱は窓ガラスを遮熱性能を持つものを選択しておくことや

住んでから緑のカーテンや簾で日射を遮蔽することも有効です。

 

最後に通風については地域の風が吹く方向を知りことから始めます。

風を取り込む方向に大きな窓を設けることが有効で

まだ住んだことのない場所で家を建てる場合は

公的な気象データを参考にすることができます。

窓は風の入口と出口を一対で設けると風が室内を通り抜けその効果が上がります。

窓は家づくりの段階で「景色を眺める窓」「光を取り入れる窓」「風を取り入れる窓」と

期待する効果を別々に考えて計画していくのがベストでしょう。

 

しかし、いくら窓を設けても風がピタリと止まる日もあります。

その場合は上の夏の家づくりの概念図にあるように

室内の上部と下部の温度差を利用して室内に上昇気流を起こして

天窓からから暑くなった空気を排気することが有効です。

 

こういったことがパッシブデザインと呼ばれる建築的工夫の概略です。

これらの積み重ねが今年ほど求められる夏もないのではないでしょうか。