アファンの森
先日、友人と話していたところ、「採算度外視で、山を守るための仕事をしている」ということを言うので、C.W.ニコルさんみたいなことを言うけど? と質問すると、「父親がニコルさんと友達で」という返事があり、少々驚きました。
私は、氏が書いた本を若い頃から今まで、ほとんど全てを読んできました。考え方に共感する部分、学べる部分が多く、長野県黒姫高原にある「アファンの森」にいつか行きたいとは思うものの、「森に勝手に入ったら承知しないぞ」というようなことが本に書いてあったので諦めていました。
しかし、本の中で紹介されていたある人を通してなら、この森に入れてもらえるかもしれないということがわかったのでお願いすると、その場から電話一本で森に入ることを快く受け入れていただきました。25年も前のことです。その当時は、この森は一般に開放されていなかったのです。
針葉樹の暗い森を光が入るように広葉樹の森につくりかえて、虫や動物、植物が生息できる多様性のある環境を取り戻すという活動をした森です。
(アファンの森財団より引用)
お手製のサウナ小屋
湿地帯の水を集めるためにつくられた池
森の木漏れ日を眺めながら深く落ち葉が積もった小道
本に書いてあるとおりの光景でした。
巾50センチくらいの小さな小川に、大きな川魚が平然と泳ぎ、針葉樹が植林される前の健康な森が、すでにその時に取り戻されていました。
その森の中の開けた場所には、ニコルさんの自宅と思われる山小屋があり、煙突から煙のあがる絵に描かれたような羨ましいかぎりの暮らしでした。
「広葉樹の森の木を薪にして料理とストーブを楽しむ」
「生活排水を肥料に変える試み」
「斜面に木を植えると根が崩落を防ぐ」
「川の護岸も木に託す」
こういった信州の森に住む人の知恵は、ニコルさんだけでなく田淵さんや柳生さんの本にも書いてあり、スケールは異なるものの、これらの本で得た知識を外構工事にいかしながら家づくりをしている自分がいます。
今年、ニコルさんは残念ながら亡くなられました。
世界中を旅して、日本の北から南まで旅をして、多くの自然に触れあいながらも、最も愛したのがこの「アファンの森」。
荒れた森にお金をだして買い取り、手を入れ続けたこの場所は、本に書いてあったとおり、自らの手を離れ寄贈されたようです。またいつかこの森へ行きたいと思っています。
では。